キリギリスの日記

働きたくないキリギリスの日記です。大学院生だったり、MAKERS2期生だったり、社長だったりします。

AirBnBの強みは、デザイン思考の徹底である

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AirBnB Storyを読んだので、その話を少しまとめたいと思います。

 

本のタイトルにもある通りストーリー調だったのですが、本ブログでは重要なファクトのみを抜粋しました。

 

顧客目線を忘れないための努力

AirBnBの立ち上げ当初の2009年は見知らぬ他人の家に泊まるという概念がなかったため、サービスの立ち上げはもちろん困難を極めました。その中で、かの有名なポールグレアムから言われた言葉は、「ユーザーに会いに行け」。

 

ブレチャージクがコーディングに集中するあいだ、チェスキーたちはユーザーをひとりひとり訪問した。雪をかき分け、全てのユーザーに会うか、そこに泊まるかした。ユーザーとの会話から多くを学んだが、ただ彼らの今におじゃましたり、自分たちのサイトを使う様子を観察したりするだけでも、はるかに多くのことを学べた。

 

こうして、「宿泊料の設定が困難」、「いい写真が撮れない」、「写真のアップロード方法がわからない」などの課題を見つけることになりました。

 

自分で作ったサービスだと、設計思想がわかっているためどうしても偏った思考になりがちです。
実際のユーザーに会いに行くことで、リアルなボトルネックを知ることができるんですね。
当たり前のことといえば当たり前のことですが、この当たり前を実際に行えるところにパーソナリティ的強みがあるように感じられます。

 

ホスト目線に立てているからこそ強力なグロースハック

AirBnBは、アメリカ最大の地元情報掲示板クレイグスリストにホストが自身の部屋の情報を自動投稿できる仕組みを作成するなどして、無料で認知度を上げることに成功します。技術力はもちろん、ホストの行動について真剣に考えているからこそのアイデアだと感じました。

 

2009年時点で、数千万ユーザーが集まるような巨大規模のサイト数少なく、クレイグスリストはそのひとつだった。その割に、マーケターや賢い起業家なら、このサイトにたやすく侵入できた。ホストが電子メールに埋め込まれたボタンをクリックすれば、エアビーアンドビーの物件をクレイグスリストで宣伝できるツールボタンをプレチャージクは開発した。エアビーアンドビーの物件はクレイグスリストの数百万から数千万の利用者の目に入るが、実際の予約はエアビーアンドビーに戻る仕組みになっていた。

 

自分の部屋に泊まってもらうことでホストは利益を上げられるので、そのための工夫なら惜しまない。

その習性をきちんと把握できていたからこそ、この施策のアイデアが出てくるし、この施策が成功したのでしょう。

 

「アンチ金太郎飴」という価格以外の強み

AirBnBのユーザーは、はじめは「安価で済ませたい」ユーザーが利用しますが、その後「人とのふれあい」、「均一化されていない体験」が本当の価値になり、急成長につながりました。特にミレニアム世代に刺さる、「世界中を自分の居場所にする」体験は人間の普遍的な欲求に応える価値になり、今も熱狂的なファンを増やし続けています。

 

「エアビーアンドビーに泊まると、ホストがそこにいなくても、身近に感じます。」とニューヨーク大学のアルン・スンドラジャン教授は言う。「親密になれるんです。その人と繋がり、その人の好きなアートや、スーツや、結婚式の写真に親しみを感じます。それが、私たちの失ってしまった感情を呼び覚ますんです。」

 

この感覚は言葉では言えないけど、僕はとても共感できます。

一緒に泊まったり、その人のパーソナルな部分を実感できた後に、友達と「仲良くなったな」と感じられるようになる。その感覚と近いものでしょう。

これは、ただ、住む場所を提供するのではなく、遠く離れた土地でもリアルなつながりを感じられる、まさに「世界中を自分の居場所にする」体験だと思います。

 

 

この3要素を総括すると、やはりデザイン思考の徹底がAirBnBの根本の強みだと考えられます。
「ホストが本当に困っていることは何?」、「ホストはどんな感情を持って、どう動く?」、「ゲストはこのサービスを通してどんな気持ちになる?」といった3つの要素を明確にメッセージとして伝えられたことで、ただの格安ホテルではない、新たな価値を創出できたのでしょう。